【第二弾】食い尽くし系の「なぜ?」を解き明かす Ver.2 脳では何かが起きている!?
やっとこさ、動画をUPいたしました。
前回の「食い尽くし」に引き続き、今回は 「食い尽くし系 Ver.2」 です。前回の動画でもできる限りを尽くしたつもりでしたが、ボディブローのようにじわじわ襲う消化不良感がやってきました。
「前頭葉」までは辿り着いたもの、「じゃあ、前頭葉で何が起きてるのさ?」と疑問は膨らむばかり。そんな知りたい欲求を満たすべく、海外の情報含め再度調べまくりました。
食い尽くし Ver.2 の動画
食い尽くし系の海外事情
専門知識をお持ちの友人に聞いてみたところ、海外、特にアメリカではこのあたりの事は日本より研究が進んでいるそうです。そうですよね、だって発達障害への研究や療育も日本と比較すれば大変進んでいますし。
そこでさっそく調べてみましたが、進んでいるとはいえまだ「一般的」とは言えない様子です。日本でいう「食い尽くし」という名称も、某掲示板でついたただの俗称です。海外でも正式な症名がついていないあたり、まだ研究中であることがうかがえます。現状は「過食症の一形態」として認知されていました。
「Binge Eating Disorder」、略してBEDの中にカテゴライズされていたりするんですが、これは何かというと、「とある過食症」を示しています。
自己嘔吐や下剤乱用という「拒食行動」が伴わない「過食症」です。
文字に表すと実にややこしい。。
つまり、一般的に知られている「過食症」とは違うタイプの症状で、分類としては、摂食障害 > 過食症 > BED っていう事らしいんです。まあこのあたりも医師によって解釈が異なったりもしますが、ざっくりとこんな感じでした。
しかも「食べる」という、日常的な行動に伴う症状なので、知らない人にはなかなか理解が及ばないところは、どの国でも同じなのかなという印象を受けました。
食い尽くしの脳の状態
調べていくうちに、2つの気になる事象に突き当たりました。ここに注目して調べてみました。
1)報酬系の異常 ー 行動のメカニズム ー
食べ物を摂取する事で、脳内の「報酬系」が活性化されドーパミンが分泌され、そのおかげで快楽や満足感を得ることができます。生きるためには必要な機能ですが、食い尽くしに陥っている人は、この報酬系に異常が生じている可能性があります。
通常より過剰に放出されているため、感じる快楽が強烈でになります。つまり、自制が効かないまでに至るほど。所謂、「脳汁」。
やっかいなのはここからで、ドーパミンの過剰分泌は「さらに繰り返そうとする」ことです。
「トナラー」の動画でもやりましたが、開通された脳の回路は、繰り返し使う事で定着します。脳の枝ぶりで例えると、他の枝より太く強固な「主枝」が出現するようなイメージですね。
そうして強化形成された脳回路はその結果、他の快楽よりも優先されるようになます。
2)前頭葉の異常 ー我慢できないメカニズムー
前頭葉にある「前頭前野」は、欲求を抑えたりブレーキの役割を持っています。自制の働きですね。当然、沸き上がる食欲を抑える役割もここが担います。
ところが、報酬系の異常により強すぎる欲求が生じると、前頭前野のブレーキとぶつかり合う事になります。その強い負荷に前頭前野が負けて、機能低下を起こします。こうして本能的欲求は解放されます。
報酬系が暴走し繰り返しドーパミンが過剰分泌されると、前頭葉の「前頭前野」が機能低下し、自己制御が出来なくなる。
これって・・・?
既視感がありまして。これ、「アレ」に似てますよね。
依存症。依存症は、脳の報酬系に関連する異常が原因で発生する病気です。
これで説明できるのは、食い尽くしだけではありません。特にアルコールや特定の物質による依存は有名ですが、繰り返される犯罪に心当たりはありませんか?
なぜ再犯率が高いの?人生台無しにするのにどうしてやめられないの?と不思議に思いますよね。
- 盗癖
- 虚言壁
- 放火
- 性犯罪
- 下着泥棒
- 露出
この状態に陥ると、依存対象に対する強い欲求や渇望が生じます。これは、脳が快楽を追求しようとする本能的な反応で、本人の意志力をはるかに上回ります。
また、依存対象が手に入らないときや効果が切れた時、不安やイライラといった症状が生じます。
食い尽くし「なぜなに」一問一答
ここまでが理解できると、一旦今までの疑問のいくつかが解消されます。
動画の中ではここを「一問一答」風に端的にまとめています。
特に、頂いたコメントでは、「どうして男性の方が多いのか」という疑問を多く見かけました。まだ議論の余地が多い説ではありますが、個人的にはまあまあ納得できる内容でした。
結構スッキリするのでぜひ動画をご覧くださいね!
- わざと他人の分を食べているケースもあるよね?
- 人の分まで勝手に食べてしまうのはなぜ?
- 何度注意しても直らないのはどうして?
- 食べ物の事になると急に意思の疎通ができなくなるのはどうして?
- 注意すると激しく怒るのはどうして?
- 本人の言い分がめちゃくちゃなんだけど?
- 特定の条件で症状が出たりでなかったりするのはなぜなの?
- どうして食い尽くし系は男性の方が多いの?
特に「どうして男性の方が多いの?」「特定の条件で症状が出たり出なかったりするのはなぜ?」については、大変興味深かったです。
いわゆる「卑しい行動」や「自分のお肉より相手のお肉の方が大きく見える」理由も、「依存による脳の変異により、自分の得を最大化させる行動をはかる」という点が個人的にすごく納得できました。
なぜいくら注意しても改善されないのか?という点をもっと詳しく知りたい場合は、「依存症とは何ぞや」を調べると近道だと思います。
報酬系と前頭前野の異常の原因 ーなぜ異常が起きるのかー
さまざま要因はあります。
- 遺伝的要因 ★
- 環境的要因
- 心理的要因
- 生物学的要因 ★
その中でも大変興味深く感じた「★」印の要因に今回は注目するとします。
1)遺伝的要因
読んで字のごとく、「そうなりやすい人」と言える体質や特性をお持ちの方がいます。
なにも発達障害の方だけがなりやすいというわけではありませんし、逆に発達障害の場合、要因が「こだわりによるもの」というケースもあり、そう単純ではないんです。「食い尽くし=発達障害」は違います。
誰でも脳には偏りと個性があります。定型の方にも発達障害の方にも「そうなりやすい体質の人」がいるという事です。
遺伝要因については、個人的に心当たりがあります。
食べる事、特にお菓子や甘いものに強く執着する男の子(母の知人の子)が近所にいました。私が見る限り幼いころから食べ物への執着があり、3歳くらいには貪欲さがはっきりと見て取れました。彼を赤ちゃんの頃から知っている私は「生まれつき」なんだろうな、と勝手に思っていましたし、そうとしか思えない頃から片鱗がありました。当時小学校高学年くらいだった私は、静かにドン引いていましたっけね。
みんなで食べるためのお菓子は人より多く取り、それだけに留まらず人目を盗んでポケットに入れてしまいます。その時の表情といったら、まるでドラマに出てくるような悪だくみする時の笑顔で、「どうしてそんな悪い顔するの?」と不気味に思っていました。今回調べた事によって、それはきっと「依存対象を手に入れた喜びと、欲の実現を最大化させた達成感だったのだな」と答えが分かった気がしました。
そして彼は食い尽くしにありがちな「お菓子を多く手に入れよう」という行動だけではなく、「お菓子を人より多く手に入れる行為がうまくいったこと」にとても興奮していたように見えました。すごく楽しんでいるというか。
普段から少々粗暴な面があり、同年代の子供を押したり叩いたりして泣かすのが好きでした。当時は分かりませんでしたが、今となれば「パーソナリティも問題がある子だ」と分かります。人の食べ物を取ってしまう行為は、人を困らせたいという「歪んだパーソナリティ面の欲」との相性が良く、彼をさらに満足させるものだったのだろう、と推察しています。
彼が高校生になった頃、母が自宅へ招いたようで見かけましたが、素行はそのままだった印象でした。酷くなっているとは感じませんでしたが、良くもなっていませんでした。
家族の苦しみや、身近な人への迷惑・不快感も大概なのですが、その行為の代償は他でもない本人に必ず返ってくる、ということを考えると、「なんか哀れだな・・・」という切ない気持ちにもなりました。
2)生物学的要因
脳内の神経伝達物質の乱れが考えられます。このバランスが崩れると発症する可能性が高まります。どのような場合に乱れが生じるのか、事例を挙げると以下です。
- ストレスや精神的な負担
- 食生活の乱れ
- 薬物やアルコールの使用
- 環境汚染や化学物質
やはり、一番の要因は「ストレス」だと感じます。
様々あるエピソードを見ると、転職や労働環境の変化等、急な変化がきっかけになっている様子が見受けられます。子供の成長や感染症による急なリモート勤務等、自分でもあまり自覚できていないストレスも含まれます。
実際、ストレスはコルチゾールを分泌し、脳回路を傷つけます。
3)発症条件
遺伝的要因があっても環境的要因があったとしても。単体の要因で発症するものではないと考えられています。
例えば、イメージするとこのような感じです。
- 遺伝的に「そうなりやすい人」が、厳しい生育環境を受け「環境的要因」として重なり発症した。
- 遺伝因子に心当たりはないけど、引っ越しや転職といった急な環境変化をきっかけに発症した。
- もともとあるパーソナリティ障害に加えて併発した(欲求の愛称がマッチし、噛み合ってしまった)。
その他、ジャンクフード等の偏った食生活は、これらの要因を起こしやすくなるとも言われています。
このように、発症要因は複合的であるそうです。
なりやすい人(体質)、性格、環境、経験、と要因がいくつか重なると発症するのですね。
気になる治療事情
やはり、事情が分かってくると気になるのは治療です。この手の事は「治りにくい」「完全に治すのは無理」とよく聞きます。再犯率が高い点をみてもそれはそうなのでしょうね。。
依存症の治療を見る限り、適切な治療法が見つかれば、一生付き合っていくとしても「問題行動を緩和できる可能性はある」との事でした。
しかし、それは本人に「治したい」という意思と、問題認識や病識がある事が大前提になります。本人が自分と向き合わず本能のままに行動を続けているようでは、治療が見込めません。
また、開拓された困った脳回路は、繰り返すことでどんどん強化されてしまいます。そのため、あまりにも長期間その状態を続けていた場合は、治療が困難になります。
そういう意味で「一日も早い治療は肝になる」と思われます。
ただし、現状は医師でもこの事象に知見がなかったり、適切な処置も手探りになっていくと思います。エピソードでも「病院へ行ったけど問題なかった」と言われてしまう事も多い様子です。
そのため、治療のスタートは「知見がある医師探し」になり、さらに「手探りでその人個人の最適な治療探しが始まる」という事と同義で、どちらにしても根気がいりそうです。
最近、医師のブログに「むちゃ食い」というワードを見かけました。その中に短い文でしたが「これ、恐らく食い尽くしの事では・・・?」と思える内容もちらほらとみられるため、知見がある医師はゼロではないと思います。もっともっと知られていくといいな。
動画UP後、このブログを書きながら、ふと「どうすれば防げるんだろう?」と考えました。私自身、好きなことに没頭するタイプで、気が済むまでやり遂げる傾向が強いです。退屈があまり好きではないので、没頭できることを一つは作っておきたいタイプです。親や知人に「研究職についたら良かったのだろうねえ」と言われることも度々あり、ちょっと不安になりました(食い尽くしの傾向はありませんw)。
没頭している時は非常に楽しく、刺激的です。ですがあまり強い刺激を受け過ぎないよう、物事はほどほどが良いという事なのでしょうね。けじめや引き際って大事なのかも。煩悩のままに行動しすぎて「変な回路の出来上がり!」は避けたいものです。「上手にバランスをとるという事は、能力なのだ」と、つくづく実感します。
併せて、自分がどのような状況で過度な刺激を求める傾向があるのか、内観しようと思いました。人によっては依存のきっかけが「心にぽっかり穴が開いたとき」なんて事もあるのだと思います。
例えば、大きな火事を目の前で目撃すると魅入られてしまう事があるそうで。その時の刺激と興奮を蘇らせるため、放火にはしってしまうケースがあるようです。きっと、大きな刺激を受けて報酬系がバグるんでしょうね。このように、衝撃的な体験がきっかけになる事もあるのかーと、原因が多岐に渡る例だと思いました。
エピローグ
一緒にいる家族や身近な人は本当に大変だろうな、と思います。食卓に安らぎを感じる事ができなかったり、時に肩身の狭い思いをしたり、心配したり。
また、本人も「意志力だけでは抗えない」という状況に陥っている事を、気の毒に感じます。
しかしコメントを拝見すると、寄り添っておられる方もいらっしゃるようで、本当にすごいなと思いました。
この動画を作りながら「依存症の治療は難しくても、症状を緩和できる治療が確立出来たら、色々な問題に希望が持てるだろうな」と感じました。
こういった本能が解放される病の治療方法については、今後も追っていきたいと思っています。
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